通勤電車でよむ詩集 小池昌代「編著」

h22310.jpg題: 胸の泉に

かかわらなければ   この愛しさを知るすべはなかった

               この親しさは湧かなかった

               この大らかな依存の安らいは得られなかった

               この甘い思いや

               さびしい思いも知らなかった

人はかかわることからさまざまな思いを知る

               子は親とかかわり

               親は子とかかわることによって

               恋も友情も

               かかわることから始まって

かかわったが故に起こる  

幸や不幸を

積み重ねて大きくなり

くり返すことで磨かれ

そして人は

人の間で思いを削り思いをふくらませ

生を綴る

ああ

何億の人がいようとも

かかわらなければ路傍の人

私の胸の泉に

枯れ葉いちまいも

落としてくれない