一遍の詩がぼくにくれたやさしい時間  水内 喜久雄 編著

h22324-1.jpg題:  会社の人事  中桐 雅夫

 

「絶対、 次期支店次長ですよ、あなたは」

顔色をうかがいながらおべっかを使う、いわれた方は相好をくずして、

「まあ、 一杯やりたまえ」と杯をさす。

 

「あの課長、人の使い方をしらんな」

「部長昇進はむりだという話だよ」

日本中、会社ばかりだから、飲み屋の話も人事の事ばかり。

 

やがて別れてみんな一人になる、

早春の夜風がみんなの頬をなでていく、

酔いがさめてきて寂しくなる、

煙草の空き箱や小石をけとばしてみる。

 

子供のころは見る夢があったのに

会社にはいるまでは小さな理想もあったのに。