題: なだれ
峯の雪が裂け
雪がなだでる
そのなだれに
熊が乗っている
あぐらをかき
安閑と
莨(たばこ)をふかすような恰好で
そこに一ぴき熊がいる
題: つくだ煮の小魚
ある日 雨の晴れまに
竹の皮に包んだつくだ煮が
水たまりにこぼれ落ちた
つくだ煮の小魚達は
その一ぴき一ぴきを見てみれば
目を大きく見開いて
環になって互いにからみあっている
鰭(ひれ)も尻尾も折れていない
顎の呼吸するところには 色つやさへある
そして 水たまりの底に放たれたが
あめ色の小魚達は
互いに生きて返らなんだ