くじけなうで  柴田トヨ 著

くじけないで母  Ⅰ  柴田トヨ

 

亡くなった母と同じ

九十二歳をむかえた今

母のことを思う

 

老人ホームに

母を訪ねるたび

その帰りは辛かった

 

私をいつまでも見送る

母 

どんよりした空

風にゆれるコスモス

今もはっきりと覚えて

いる 

 

母  Ⅱ

 

母の後を

風車を かざしながら

追いかけて行く

陽は暖かかった

 

 振り向く母の笑顔に

安堵しながら

早く大人になって

孝行したい

そう思ったものだ

 

母の歳をとうに越して

今 私は

初夏の風に

吹かれている

 

若い母の声が聞こえる