いきものとおしゃべりするには、観察するのがいちばんだ。
子どもの頃、ぼくは、虫と話がしたかった。
おまえはどこに行くの。何を探しているの。
虫は答えないけれど、いっしょうけんめい歩いて行って、
その先の葉っぱを食べはじめた。
そう、おまえ、これが食べたかったの。
言葉の代わりに、見て気がついていくことで、
その虫の気持ちがわかる気がした。
すると可愛くなる。うれしくなる。
それが、ぼくの、いきものを見つめる原点だ。
どうやって生きているかを知りたいのだ。
おまえ、こんなことしているの。
そうなの、こういうふうに生きているの。
その物語がわかれば、すごく親しくなれる。
みな、ようよう今の環境に適応して生きている。
生きていることへの深い共感は、そうやって生まれてくる。
世界を、こんなふうに見てごらん。
この本を、これからの少年少女と大人に贈る。
人間や動物を見るときのぼくなりのヒントをまとめたものだ。
生きているとはどういうことか、
豊かな見方をするといいと思う。