天声人語から
かつて小説に連載された井上靖の小説『氷壁』は、世に登山ブームを巻き起こした。読まれている方もおられようが、主人公の勤め先の上司が、なかなか味わい深い。穂高岳の氷壁をめざす部下を案じて言う 『登山家というものも、いい加減な …
かつて小説に連載された井上靖の小説『氷壁』は、世に登山ブームを巻き起こした。読まれている方もおられようが、主人公の勤め先の上司が、なかなか味わい深い。穂高岳の氷壁をめざす部下を案じて言う 『登山家というものも、いい加減な …
完全な敗北 文:藤波 洋香 私と母は仲の良い親子ではない。 どちらかとというと仲の悪い親子だと思う。それは性格が似すぎているからかもいれない。 どちらも自己中心的で、協調性に欠け負けず嫌いとなればうまく行くわけが …
題: なだれ 峯の雪が裂け 雪がなだでる そのなだれに 熊が乗っている あぐらをかき 安閑と 莨(たばこ)をふかすような恰好で そこに一ぴき熊がいる 題: つくだ煮の小魚 ある日 雨の晴れま …
加島 祥造著 求めないーーーー なんて言葉をつらねて あなたに聞いてもらうことを 私は求めている。 たしかにその通りだけれど あなたが聞き捨てても 不平は言わない。 聞き入れられなくても 不満を持たず 悲しがらず 怒 …
求めない---- すると ひとの言うことが前より よく分かるようになる そして ひとの話をよく聞くようになる すると ひとは とても喜ぶものだよ 求めない---- すると ひとは安心して君によってくる 求めない-- …
題:友について 必要な鈍さ いつも敏感で鋭くある必要はない。 特に人との交わりにおいては、 相手のなんらかの行為や考えの動機を見抜いていても 知らぬふうでいるような、一種の偽りの鈍さが必要だ。 また、 言葉を …
くち まど・みちお著 いわなかたことは いったことの たいがい いつも なっばいかだ それに いったことは たいがい いつも いうまでも なかったことだ で くちも くちで ありうるわけか こんなにし …
『自分の番』 詩人相田みつお うまれかわり 死にかわり 永遠の過去のいのちを 受けついで いま自分の番をいきている それがあなたに いのちです それがわたしの いのちです 現代人は、あまりにも生きている人間ばかりに焦 …
太陽と地球 まど・みちお 著 まだ若かったころのこと 太陽は気がつきました わが子 地球について ひとつだけ どうしても 知ることのできないことが あるのを・・・ それは 地球の夜です 地球の夜に どうか安ら …
題: 水道のせん まど・みちお著 水道のせんをひねると 水が出る 水道のせんさえあれば いつ どんなところでも きれいな水が出るものだというように とおい谷間の取入れ口も 山のむこうの浄水場も 山の上の配水池も こ …