まどさん 100才100詩集
題: おみやげ なんだか 足が軽いと思ったら さっき電車の中で 知らないよその赤ちゃんが 笑いかけたのだった わたしを見て 嬉しくてたまらないように その笑い顔を いつのまにか 胸にかかえていて それで 夜道の足も …
題: おみやげ なんだか 足が軽いと思ったら さっき電車の中で 知らないよその赤ちゃんが 笑いかけたのだった わたしを見て 嬉しくてたまらないように その笑い顔を いつのまにか 胸にかかえていて それで 夜道の足も …
題: 昨日はどこにもありません 三好 達治 昨日はどこにもありません あちらの箪笥の抽出しにも こちらの机の抽出にも 昨日はどこにもありません それは昨日の写真でしょうか そこにあなたの立っている そこにあ …
題: 父に 江國 香織 病院という 白い四角いとうふみたいな場所で あなたのいのちがすこしづつ削られていくあいだ わたしはおとこの腕の中にいました たとえばあなたの湯呑みはここにあるのに あなたはどこにも …
題: なにもそうかたを・・・・ 高橋 元吉 なにもそうかたをつけたがらなくてもいいではないか なにか得態の知れないものがあり なんということなしにひとりでにそうなってしまう ということでいいではないか 咲いた …
題: せみ 木村 信子薯 せみは たった一週間の命のために 永い年月、土の中で暮らさなければはらない というけれど 土の中の年月こそ せみの本当の命のよろこびかもしれない 地上のよろこび、なんて思うのは 人間のか …
題: 地上で 草野 信子 帰ってきた日の夜 男は二度ベットから転がりおちた それまでの八日間 無重力の中で眠っていたから 宇宙飛行士の妻が語った その話が好きだ 宇宙から見る地球に国境線はなかったと 男 …
題: 会社の人事 中桐 雅夫 「絶対、 次期支店次長ですよ、あなたは」 顔色をうかがいながらおべっかを使う、いわれた方は相好をくずして、 「まあ、 一杯やりたまえ」と杯をさす。 「あの課長、人の使い方をしらん …
題: 自分の感受性くらい 茨木 のり子 ぱさぱさに乾いてゆく心を ひとのせいにはするな みずから水やりを怠っておいて 気難かしくなってきたのを 友人のせいにするな しなやかさを失ったのはどちらなのか 苛立 …
題: てつがくのライオン ライオンは「てつがく」が気に入っている。 かたつむりが、ライオンというのは獣の王で哲学的な様子をしているものだと教えてくれたからだ。 きょうのライオンは「てつがくてき」になろうと思った。 哲 …
題: 恋するくじら くじらは独り言をいうようになった。 好きなひとができたからだと思う。 好きなひとができると、どうして独り言をいったり鏡をみたりしてしまうのだろう。 夢も、色つきの長いのを見るようになる。 「きっと …