朝日新聞 4.16 天声人語から
詩人の島田陽子を知らなくても、大阪万博のテーマー曲『世界の国からこんにちは』は大勢が覚えていよう。1970年 三波春夫さんの声で流布した歌は、時代の応援歌そのものだった。 歌詞は公募で、島田さんの作が1万3千余通から選ば …
詩人の島田陽子を知らなくても、大阪万博のテーマー曲『世界の国からこんにちは』は大勢が覚えていよう。1970年 三波春夫さんの声で流布した歌は、時代の応援歌そのものだった。 歌詞は公募で、島田さんの作が1万3千余通から選ば …
いきものとおしゃべりするには、観察するのがいちばんだ。 子どもの頃、ぼくは、虫と話がしたかった。 おまえはどこに行くの。何を探しているの。 虫は答えないけれど、いっしょうけんめい歩いて行って、 その先の葉っぱを食べはじめ …
忘れる 柴田トヨ 歳をとるたびに いろいろなものを 忘れてゆくような 気がする 人の名前 幾つもの文字 思い出の数々 それを 寂しいと 思わなくなったのは どうしてだろう 忘れてゆくこのと幸福 忘れ …
風と陽射しと私 風が 硝子戸を叩くので 中に入れてあげた そしたら 陽射しまで入って来て 三人で おしゃべり おばあちゃん 独りで寂しくないかい? 風と陽射しが聞くから 人間 所詮は独りよ 私は答えた がん …
あなたに Ⅱ 追いかけて 愛した人を 苦しめるより 忘れる勇気を 持つことが 大切よ 後になると それがよくわかるの あなたのこと 心配してくれている 人がいる あなた気づかないだけ
母 Ⅰ 柴田トヨ 亡くなった母と同じ 九十二歳をむかえた今 母のことを思う 老人ホームに 母を訪ねるたび その帰りは辛かった 私をいつまでも見送る 母 どんよりした空 風にゆれるコスモス 今もはっきりと …
手と心 谷川 俊太郎 (H23.1.18 朝日新聞より) 手と手を重ねる 手を膝に置く 手を肩にまわす 手で頬に触れる 手が背を撫でる 手と心は仲がいい 手がまさぐる 手は焦る 手が間違える 手は迷走し始めて …
かつて小説に連載された井上靖の小説『氷壁』は、世に登山ブームを巻き起こした。読まれている方もおられようが、主人公の勤め先の上司が、なかなか味わい深い。穂高岳の氷壁をめざす部下を案じて言う 『登山家というものも、いい加減な …
完全な敗北 文:藤波 洋香 私と母は仲の良い親子ではない。 どちらかとというと仲の悪い親子だと思う。それは性格が似すぎているからかもいれない。 どちらも自己中心的で、協調性に欠け負けず嫌いとなればうまく行くわけが …
題: なだれ 峯の雪が裂け 雪がなだでる そのなだれに 熊が乗っている あぐらをかき 安閑と 莨(たばこ)をふかすような恰好で そこに一ぴき熊がいる 題: つくだ煮の小魚 ある日 雨の晴れま …