ポケット詩集 Ⅲ 童話屋
題: なにもそうかたを・・・・ 高橋 元吉 なにもそうかたをつけたがらなくてもいいではないか なにか得態の知れないものがあり なんということなしにひとりでにそうなってしまう ということでいいではないか 咲いた …
題: なにもそうかたを・・・・ 高橋 元吉 なにもそうかたをつけたがらなくてもいいではないか なにか得態の知れないものがあり なんということなしにひとりでにそうなってしまう ということでいいではないか 咲いた …
題: せみ 木村 信子薯 せみは たった一週間の命のために 永い年月、土の中で暮らさなければはらない というけれど 土の中の年月こそ せみの本当の命のよろこびかもしれない 地上のよろこび、なんて思うのは 人間のか …
題: 地上で 草野 信子 帰ってきた日の夜 男は二度ベットから転がりおちた それまでの八日間 無重力の中で眠っていたから 宇宙飛行士の妻が語った その話が好きだ 宇宙から見る地球に国境線はなかったと 男 …
題: 会社の人事 中桐 雅夫 「絶対、 次期支店次長ですよ、あなたは」 顔色をうかがいながらおべっかを使う、いわれた方は相好をくずして、 「まあ、 一杯やりたまえ」と杯をさす。 「あの課長、人の使い方をしらん …
題: 自分の感受性くらい 茨木 のり子 ぱさぱさに乾いてゆく心を ひとのせいにはするな みずから水やりを怠っておいて 気難かしくなってきたのを 友人のせいにするな しなやかさを失ったのはどちらなのか 苛立 …
題: てつがくのライオン ライオンは「てつがく」が気に入っている。 かたつむりが、ライオンというのは獣の王で哲学的な様子をしているものだと教えてくれたからだ。 きょうのライオンは「てつがくてき」になろうと思った。 哲 …
題: 恋するくじら くじらは独り言をいうようになった。 好きなひとができたからだと思う。 好きなひとができると、どうして独り言をいったり鏡をみたりしてしまうのだろう。 夢も、色つきの長いのを見るようになる。 「きっと …
題: クレパスに消えた女性隊員 秋谷 豊 京都山岳会登山隊の白水ミツ子隊員が、第一キャンプからベースキャンプへ下山中、ボゴド氷河のヒドン・クレバスに転落、死亡したのは、1981年6月10日のことであった。 もちろ …
題: 夕焼け 吉野 弘 いつのことだが 電車は満員だった。 そして いつものことだが 若者と娘が腰をおろし としよりが立っていた。 うつむいていた娘が立って としよりに席をゆずった。 そそくさととしよりが座った。 礼も …
題: 天国のあなたへ 柳原タケ 秋田県・80歳 娘を背に日の丸の小旗をふって、あなたを見送ってから、もう半世紀がすぎてしまいました。 たくましいあなたの腕に抱かれたのは、ほんのつかの間でした。 三二歳で英霊となって …